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バイリンガル教育の落とし穴!熟達度から分かるお子様のバイリンガルレベルは?

2022年8月2日

さわママ

2022年2月から5歳(移住当時)の息子の教育を目的にマレーシアに移住したのですが、「セミリンガル」というワードをよく耳にするようになりました。

「セミリンガル」ってどういう状態なの?
言葉のイメージは、第一言語(母語)と第二言語(英語等)の両方が中途半端?という程度の理解しかありませんでした。

大学時代、”言語学”を学んだ私としては、2言語以上の言語を習得する方法やその過程にとても興味・関心がありますし、どうせなら、手探りではなく、明確な理解のもと息子の第二言語(英語)、第三言語(中国語)の熟達度を上げたいと思い、今一度、言語学を深堀りし、同じ不安を抱えている皆さんに少しでも参考になればと記事化しますので、参考にしてみてください。

1.バイリンガル(Bilingual)の定義

バイリンガルとはどういう状態のことでしょうか?おそらく、私も含めてバイリンガルの定義を正しく理解している人は少ないのではと思いました。研究者や個人によって、さまざまな見解があるのも事実です。


まず、定義の理解から始めましょう!

ウィキペディアでは▼

二種類以上の言語能力を持っている人のことである。そのうち、二言語話者をバイリンガル(bilingual)、三言語話者をトリリンガル(trilingual)、四言語以上の話者をマルチリンガル(multilingual)と呼ぶ。

引用:Wikipedia

広辞苑では▼

1. 2言語を併用すること。2言語を併用する人。
2. 同時に2言語で放送すること。

引用:広辞苑

大辞林では▼

1. 状況に応じて二つの言語を自由に使う能力をもつこと。また,その人。
2. 二か国語で書かれている,二か国語で話されているなどの意を表す。

引用:大辞林

メリアム・ウェブスター英英辞典(The Merriam Webster Dictionary)では▼

1. having or expressed in two languages(訳:2言語で表現できること)
2. using or able to use two languages especially with equal fluency(2言語を同等に流暢に話す/使用することができる)
3. of or relating to bilingual education(バイリンガル教育に関係する)

引用:The Merriam Webster Dictionary

ケンブリッジ英語辞典(Cambridge Dictionary)では▼

ADJECTIVE
1. able to use two languages equally well (訳:2言語が同等に流暢に話すことができる)
2. (of a group or place) using two languages as main languages(訳:2言語共に主言語として使用できる)
3. written, created or done using two languages(訳:2言語共に4技能(聞く・話す・読む・書く)が整っている状態)
NOUN
a person who speaks two languages equally well(訳:2言語が同等に流暢に話すことができる人)

引用:Cambridge Dictionary

なるほど。まとめると、以下の3点になります。

バイリンガルとは、
①2言語の言語能力がある。

➁2言語が『同等に』『流暢に(ネイティブレベルで)』話すことができる。
③話すだけではなく、2言語の4技能(聞く・話す・読む・書く)が整っている。

話せるだけでは、不十分ってことなんですね。


特に、The Merriam Webster DictionaryやCambridge Dictionaryでは、「流暢さ」「言語の4技能」が記載されていることがバイリンガルのハードルを上げているように感じました。


2.言語学者が定義するバイリンガルとは?

World Family Institute of Bilingual Science のPaul Jacobs氏は、Journal of Kid’s Brain Science Vol.1 No.1, 2018の中で、バイリンガルについて次のように述べています。

バイリンガルになるには、二つの言語を同じように完全にマスターしなければならないと信じ続けている人が多い。このように考えてしまうとバイリンガリズムは、到達することができない非現実的なものとなる。そして、手に入れることは不可能に近い、極めて自分とは無縁の能力のように思われる。この点は、子どもに二つの言語を話せるようになってほしいと考える親にとって、特に重要だ。なぜならば、バイリンガルの意味を正しく理解していない親は、子どもがバイリンガルになるうえで障害になりうるからである。

引用:Perspectives on Bilingualism in the World and and Japan: The Reality and Potential

バイリンガルの定義には、「流暢さ」「ネイティブレベル」など高い熟達度が求められているが、次に挙げる彼らはバイリンガルではないのでしょうか? (※以下、理解深耕の為に、第二言語を英語と定義する)

例①:両親がそれぞれ違う言語を話す場合。年齢相応より進度に遅れがある英語を話すその幼い子供。

例➁:長期において英語圏に住んでいるが、強い日本訛りがある英語を話す人。

先述の定義の部分で記載しましたが、ウィキペディア、広辞苑、大辞林では、流暢さ、ネイティブレベル等の記載はありません。

Paul Jacobs氏は、更に、以下のようにも述べています。

二つの言語両方でネイティブ・スピーカー並みの流暢さがあるかどうか、ということよりも、必要に応じて二つの言語を使って意思疎通ができるかどうか、ということだ。これは、日常的なバイリンガリズムをより正確に言い表した定義だ。
バイリンガリズムという能力は、多様であり、一人ひとりで異なる。バイリンガルになるということは、誰もが参加できる過程なのである。

引用:Perspectives on Bilingualism in the World and and Japan: The Reality and Potential
さわママ

この定義により、バイリンガルは一握りの超ハイスペック言語熟達者のみを表すものではなく、2言語を使用し意思疎通する事ができる人を示すと定義の範囲が広がることで、世界中の多くの人がバイリンガルであるということに繋がるのかもしれないですね。


3.英語を話す人口ってどのくらい?

このように英語は、Native SpeakersとNon Native Speakers含めるとかなり多く(約15億人)を占めることが、この図によりわかります。バイリンガルとはこれらのOther Speakersを示すのでしょう。


4.バイリンガルの種類とは? - 熟達度による3分類化 -

世界では、英語を母語として思料するネイティブスピーカー3.7億人に対して、10.8億人が第二言語(or それ以外)として英語を話しています。
前述で定義したように、「ネイティブ同等レベル」「流暢さ」が必ずしもバイリンガルを語る上での必須要素ではないということだが、熟達度は各個人により差異がある事は明確です。

言語学的には、Jim Cummins氏(professor at the Ontario Institute for Studies in Education of the University of Toronto)が熟達度によりバイリンガルは以下の3区分を定義しました。

均衡バイリンガル(バランス・バイリンガル)

2言語の能力に差が無く、4技能(話す・聞く・読む・書く)すべてが年齢相応に高いレベルである状態。

偏重バイリンガル(ドミナント・バイリンガル)

2言語の能力に差があり、片方は年齢相応だが、もう一方が劣っている状態。

さわママ

実際、バイリンガルの大多数はこれに該当するのではないでしょうか。

限定的バイリンガル(ダブルリミテッド・バイリンガル/セミリンガル)

どちらの言語も年齢相応のレベルに達していない、両方の言語とも一定のレベルに達していない状態。
つまり、母語も第2言語も中途半端ということです

さわママ

現在、6歳になったばかりの息子ですが、振り返ると、息子は、限定的バイリンガル(実際は、トリリンガル)だったように思います。

母親:日本語
父親:中国語
スクール:英語(※日本人が多い日系プリに加え、9-18預けと長時間だった為、これが悪影響の要因だったのかも。)

小さな息子にかなり負荷がかかっていることは間違いありません。
3言語全ておいて、発話の遅さ、熟達度は明らかに年齢より低いと感じました。

しかし、年齢が上がるにつれ、母語を日本語と定め、会話量、読書量を増やすことで思考力は飛躍的に改善したと思います。実際、お受験教室(伸●会)では、常に上位に位置してました。


5.要注意!バイリンガル教育の落とし穴

バイリンガル教育を進めるにあたり注意すべき点は、以下の赤枠「限定的バイリンガル(セミリンガル)」の知的発達への影響です
日本において幼児期の英語学習は注目を浴び、早い段階から自宅においておうち英語やインターに通わせたりと、積極的に取り組んでいるご家庭も多いと思います。正しい理解のもと、バイリンガル教育を進めていく必要があるようですね。さもないと、両言語も中途半端となり、一番危うい状態になりえる可能性もあります。

さわママ

日本でお子さんが日本の学校に通う場合、この不安はほぼないと思います。生活環境すべてが母語(日本語)の為。

最近増殖している「新興系インター」は、これに陥る可能性が高いのでは?という仮説を持っています。
日本人率が高い日系インターや非ネイティブ向けのインターなどは要注意です。理由は、ネイティブと非ネイティブでは扱う語彙数・表現力に明らかな差があります。

一例として、息子の場合、日本人多めの日系のプリスクールで幼児期を過ごし、発話の遅れや語彙の少なさが顕著にみて取れました。

インターの選択において、先生と生徒のネイティブ率は非常に重要な要素です。

現在、我が家は、マレーシアに教育移住してますが、ローカルやアジアからの学生が多いスクールは語学習得という点で問題ありだと考えます。インター選びは難しいですが、これはとても重要な要素ですので参考にしてください。

我が家が、マレーシア教育移住を決断し、インター校の選定、実際ビザを取得するまでの流れは別の記事でまとめています。


6.バイリンガルとセミリンガルを分ける決定的な要素

バイリンガルの3分類は理解できたと思います。
では、セミリンガルには、具体的にどういう要素が不足しているのかをJim Cummins氏は定義されています。

セミリンガルとは、年齢相応の学問的な思考、抽象化を伴う言語能力が不足しているということですね。

これは、とても分かりやすい定義ですね。

全体をまとめると・・・、

■辞書等による「バイリンガル」の定義は、2言語が同等に、流暢に、そして4技能を使いこなせること。
■言語学者による「バイリンガル」の定義は、2言語を使用し意思疎通する事ができる人と許容範囲が広がった。
■言語学者によるバイリンガルは、母語・第二言語の熟達度により3分類される。
 ①均等バイリンガル
 ➁偏重バイリンガル
 ③限定的バイリンガル(セミリンガル)
■限定的バイリンガル(セミリンガル)は、知的発達に悪影響がある。
■均等/偏重バイリンガルと限定的バイリンガル(セミリンガル)の差は、年齢相応の学問的な思考、抽象化を伴う言語能力が備わっているかどうかである。

さわママ

この定義を理解した上でバイリンガル教育を進めると、お子さんをセミリンガルではなく、バイリンガルへと導いていけそうですね。
我が家も意識をしながらバイリンガル教育(トリリンガル教育)を継続していければと思います。


「バイリンガル教育」においても記事をまとめていますので、よろしければご一読ください。

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  • この記事を書いた人

さわ

日系航空会社から日系&外資系IT企業を経てイタリア育ちの中国人と国際結婚。息子が0歳から幼児教育・おうち英語&中国語・お受験学習・インターナショナルスクール・海外教育移住と色々経験。日本語・英語・中国語のトリリンガル子育てに関する情報発信ブログです♡
息子(8歳)と共にマレーシアのイギリス式インターへ母子教育移住中です。

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